超音波カッター使用レポート
超音波カッターで模型作業をサポートする

模型制作の中で超音波カッターを最も使用する機会は素材の切断だろう。厚みのある素材や硬い素材であっても超音波カッターならば楽に切ることができるためだ。しかし反面切断力が強すぎることもあり、仕上げ時等に活用されることはあまりないのも事実。だが、模型や加工する素材を直接切るのではなく、模型に使用する材料の用意や道具を用意する用途、そしても模型制作後の場面等で活用することは可能だ。そこで今回は超音波カッターを使用し各種ヤスリの切り出しや、ランナー処理等を行ってみた。

その1:各種ヤスリを切り出す

超音波カッターで切断した部位やはもちろん、パーツ全体への表面処理等で使われる各種ヤスリ。中でも使用頻度が高いのは紙(布)ヤスリや、スポンジヤスリだ。しかし削りたい部位に合わせたサイズを用意するのはなかなか大変。これらのヤスリをハサミを使って切るのは手軽だが、切断の際にハサミを痛めてしまうし、カッターナイフでの切断は刃を交換できるため手軽だが、スポンジ等の柔軟性の高い素材を切るのはなかなか難しいものだ。さらにこれらを細く切り出すとなると一苦労。そこで今回は、超音波カッターを使いこれらのヤスリを切り出してみた。

使用した機材と替え刃

ZO-41を使用。Highモードでも可能だが、今回は細く切り出すことが目的であったので、ゆっくり作業が行えるNormalモードを選択。刃も標準刃を使用した。

スポンジヤスリ

主に模型で使用される2タイプのスポンジヤスリを用意した。1つは硬質なスポンジ面を備えた『神ヤス』等に代表されるタイプ、そしてもう1つは以前から頻繁に使用されていたスポンジ面が柔らかいタイプ。まず前者のタイプだが、スポンジ面が固めなため普通のカッターナイフでも変形がおきにくく切断しやすい。
だが、今回試したように約2mm幅の切断となると話へ別。スポンジの端を切る際に力に耐えきれなくなったスポンジ部分が変形し、まっすぐ切り出すことが難しくなるためだ。しかし、超音波カッターの“力を入れずに切る”という特性を活かせば、ほぼ1度の刃を走らせただけで容易にカットすることが可能。また通常のカッターではきれいに切りにくいスポンジ面の柔ら無いタイプのヤスリも(スポンジ面の厚みの影響もあり、刃を2度走らせなければならなかったが……)きれいに切断することができた。

硬質スポンジ付き
柔らかいスポンジ
紐状に加工したスポンジヤスリ。これで奥まったパーツや棒状のパーツのヤスリがけなどが容易になるはず。

布ヤスリ

布ヤスリや紙やすりは扱いが容易なヤスリと言える。布目に合わせて折り目をつけてから左右に引っ張ることで、手できることも可能なためだ。しかし、今回試したように細い帯状の切断となると話は別で、切り出した際に変形や繊維の毛羽立ちの発生。さらに、引っ張った際にらせん状に変形するなど、良いコンディションとは言いがたい形で切り出されしまうためだ。

しかし、超音波カッターならばそんな心配は皆無。今回は折り目ををつけずにフリーハンドでカット。簡単に帯状に布ヤスリを切り出すことができた。なお、今回切断した素材をカットする際、ガラス等の滑るマットではなく、刃先が食い込むゴム製のマットや不要な雑誌等を敷き、刃先を食い込ませながら1度または2度刃を走らせて切断するのがおすすめだ。


奥まった部分のパーティングライン消し等で活躍するリボン状の布ヤスリ。様々な太さのものを切り出しておくと良いだろう。

メラミンスポンジ

さらに柔らかいメラミンスポンジも容易に切り出すことが可能。元々切断しやすい素材だが、スポンジヤスリ以上に力が入るとゆがむ素材なので細く切り出すのは通常のカッターではなかなか難しい。しかし、超音波カッターを使えばご覧の通り。まずはメラミンスポンジの角を上部から2度刃を入れ角の尖ったタイプのメラミンスポンジを切り出し。断面が三角になったタイプはメラミンスポンジの面に約45度の角度をつけて2度刃を走らせて切り取ったもの。これらの極小のメラミンスポンジは爪楊枝やピンセットを使い細かい部分の加工に使うと良いだろう。

各種ヤスリの加工は思ったよりも快適。時間があるときに切り出しておき、ケースなどに分類して納めておくとより模型制作が効率的になるはずだ。

その2:ランナーの処分

次に模型製作後の問題に注目した。プラスチックモデルをくみ終わった後に残った大量のランナー。もちろん残しておいて加工に使うこともできるが、キットが増えると処分する機会も出てくるだろう。しかし、このランナーの処分、いざやろうと思うとなかなか大変な作業ではある。よく使われる方法のニッパーの切断は何よりも時間がかかり、さらに疲れる。またランナー処分の際に、最近流行の薄刃ニッパーを誤って使用し、刃が欠けてしまったという悲劇も時折聞こえてくる。しかしそんな切りにくい素材の切断力が問われる時こそ超音波カッターの出番とも言えるだろう。

使用した機材と替え刃

ZO-41を使用。パワーモードはHighモードを選択した。ZO-80ならばS-Highモードを使っても良いだろう。刃は標準刃を使用している。

作業はいたって簡単。処分したいランナーを重ねて切断するだけ。刃は横に引くのでは無く、上から押しつぶすように使い切断した。また今回は1枚のランナーではなく、押さえることが可能だった3枚のランナーをまとめて切断した。切断の際、特に変わったテクニックは使用していないが、ランナーをおさえる手に振動熱が伝わることがある。Report9で紹介したシリコンシート等を使用してランナーを抑えるとより安全に作業を進めることができるので試してみてほしい。なお、Highモード等を使用すると切断面には溶けや焦げが発生する。マスクと換気の用意を忘れずにしておこう。


カットしたランナーを確認

3本のランナーをまとめてカット。切断時の素材の溶けで3本のランナーが癒着している。とはいえ、この3本は軽くつまむだけでバラバラにすることができる。

切断しにくいランナータグも容易に切断可能。ランナータグはあえて残しておき、超音波カッターの切断テクニックを磨くための練習用素材に使うのもおすすめだ。


重ねてランナーを切る際、一番下のランナーの途中で刃を止めるのがおすすめ。最後まで切ると反動でランナーが弾け、切り屑が周囲に飛び散ってしまうことがあるためだ。あえて途中までカットしてから仕上げに手で折るのがおすすめだ。

わずか数分でこれだけのランナーを切ることができた。また、ランナーだけでなく梱包に使用されたブリスターパックを処分する際にも超音波カッターは効果を発揮してくれることだろう。

切断力ばかりが注目されがちな超音波カッターだが、今回のリポートでは、模型作業において主役だけでなく渋い脇役もこなせる超音波カッターの実力に注目した。適切なサイズのヤスリがあれば仕上がりもはかどる。また、ランナー等の片付けが効率的になればその分模型本体の制作に時間が割けるようになる。結果、模型と向き合う時間がより密度が高くなるというわけだ。時に主役、特に脇役もこなせる超音波カッターを使い、より密度の模型制作の時間を過ごしてみてほしい。

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