切断する際に抵抗が強いゴムなど素材の切断は、超音波カッターが得意とするもの。しかしゴム素材を大きく切ることは可能でも繊細な切断はどうだろう? 今回はハンドクラフトホビーの中でも人気が高く、繊細なゴムの切断を要求される消しゴムはんこに超音波カッターが応用できないか試してみることにした。なお筆者は消しゴムはんこを制作するのは初体験。カッターナイフ等を使った一般的なやり方の消しゴムはんこも作ったことがなかったため、工程を間違えたりしている。そんな筆者の失敗も含めて加工の工程を見てほしい。
■消しゴムはんことは?
消しゴムを加工して任意の図形等を表現するハンドクラフトホビーの1種。ハンドメイドのカテゴリではオリジナルの消しゴムスタンプを作成し、販売する作家も多数いる人気カテゴリ。主にカッターナイフや彫刻刀などを使い消しゴムを加工していくが、昨今ではそれらの道具にとらわれないさまざまな加工方法が研究されている。
図案の用意〜転写
まずは消しゴムに転写するための掘りたい図案をトレーシングペーパーに描く。後で裏返して消しゴムに転写する必要があるため、鉛筆やシャーペンを利用して書いていく。あまり固めの芯の鉛筆を使うと転写しにくいので注意。まずはどんな図案にするのか思案。初心者であるのである程度単純な形であること、それでいて今回のテーマでもある細かい部分の加工があること……を考慮した結果、もけ部のロゴから“も”の字を描いてみた。今回はフリーハンドで模写したが、もし正確に書き写したい図形があるなら、一度プリントアウトしたものを上からなぞると良いだろう。
さて、本来消しゴムはんこでは掘る部分を鉛筆で塗りつぶし、削らない部分は塗らずにおくのだが、消しゴムはんこ作り初挑戦だった筆者は間違えて掘らずに残す部分を塗りつぶしてしまっている。ご容赦いただきたい。
トレーシングペーパーを裏返して消しゴムに転写。書いた面をゴムにしっかり固定し裏側からへら等でこすって転写する。消しゴムは色移りしやすいため、軽くこする程度でOK。強くこすりすぎると図案の用紙が破れたりするのでほどほどに。
ここで用意したのは消しゴムはんこ用の専用ゴム。ゴムが表面の色つきの層と奥の白い層の2層に分かれており、削った部分のみが白く浮き出てくるというスグレモノだ。最近では様々な種類のものが販売されており、100円ショップ等でも見かけることができる。
切り出し開始
早速文字のアウトラインを切り出していくことにした。使用した超音波カッターはZO-80。作業はすべてノーマルモードのみで行ったため、Zo-41等のでも良かったのだが、フットペダルを使うかもしれないと考え、この機種を使用した。
次に替え刃の中から消しゴムはんこに使えそうな刃を探す。標準刃では刃渡りが短いため切り出しや、不要部分の除去に不向きと判断し、刃の長い替え刃を探す。
その結果全体の形を削り出すのに選んだのがこの刃だ。
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図案に合わせて残したい部分から外側に向けて刃を滑らせていく。消しゴムはんこでは残す面から外側に向けて斜めに切り込みを入れていくのが基本。細かく入り組んだ部分は刃を浅く入れ、広い面は深く刃を入れつつアウトラインを掘り、側面から不要な部分を切って剥がしていくのを繰り返す。
作業時間にして約5分、超音波カッターによる消しゴムの切断は非常に快適……なのだが、快適すぎる故にちょくちょく手元が狂ってしまい、気がつけば“も”の字はガタガタになっていた。作業中の超音波カッターは、刃が高温になるため、刃の背に指を当てて細かな部分の動きをコントロールすることもできないため、進行方向の微妙な調整ができないのも作業のしにくさに拍車をかけている。
先曲刃でひと通り削り出した“も”の字のはんこ。作業自体は非常に快適だったものの、一応形になった程度の完成度。直線部分はガタガタで、角にも細かな傷が浮き出たりと散々な状態だ。硬いものを曲線状に切る加工では優れた先曲刃だが、柔らかい消しゴムの加工は正直かなりのテクニックを要する。刃の形状自体は細かなカットに向いているため、繊細な形状を切り出したい所では動作を止め、手動で切る等の臨機応変な操作をすれば良いかもしれない。
ガタガタになった部分をリカバリする
今回の“も”の字が直線主体のデザインのため、直線の削りに強い替え刃の方が向いているかもしれない。そう考えてガタガタになってしまった“も”の字をなんとかリカバリーすべく、次なる替え刃を探す。まっすぐで長い変え刃と言えば……。
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ガタガタになってしまった面を方形刃で調整していく。刃の長い方形刃なら安定して直線を切り出せるため、かなりの部分をリカバリすることができた。また、長い直線を切る際は動作を止めた状態で切る場所に刃を当て、位置を確定してからスイッチを入れる方法がおすすめ。今回使用したZo-80のオプションパーツ、フットペダルを使うことで、任意のタイミングで楽にスイッチを入れることができる。
リカバリ完了。直線部分がかなり改善されたので、全体的に“も”の字のゆがみが抑えられたようだ。ただし、刃の形状から細かい部分の処理には課題が残る。さらに超音波カッターでこれらの細かな部分の加工を追求するなら、平刃(1mm)/平刃(2mm)や四角錐刃等を用意して削ると良いだろう。
完 成
下書きを練り消しを使用して消したらスタンプが完成。早速スタンプを使用してみた。
多少いびつになってしまった部分も、手作りならではの味と言えるのでは?
ゴム等の反発力の強い素材の切り出しを伴う消しゴムはんこ作りだが、超音波カッターを使えばかなり手早く作業ができることができた。消しゴムはんこ作りに慣れた作家なら、その他の替え刃も駆使して、より難易度の高い図案の削り出しもできるのではないだろうか?
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