超音波カッター使用レポート
切れ味のために……振動子ホーンをメンテナンス

刃先に超音波振動を加えることで切断効率を上げている超音波カッター。そのパフォーマンスを最大限に保つためにはこまめなメンテナンスが不可欠となる。今回は替え刃を支える振動子ホーンのメンテナンスについてより深く紹介していきたい。

今回使用した機材

超音波カッターZO-41を用意。ここ最近メンテナンスを行っていない状態でしっかりとした振動子ホーンメンテナンスが必要であると判断。ホーンの清掃道具として『メンテナンスセットSB01』と綿棒、無水エタノールを用意した。

 清掃前のZO-41のコンディションを確認

標準刃を装着した状態から見ていこう。標準刃自体にもダメージを受けているが、それ以上に固定ビスのくたびれ具合が目を引く。またホーン外部にもパテ等の汚れが付着している。これらの付着した汚れは超音波振動の妨げになりかねないので、今回のメンテナンスであわせて除去していくことにした。

振動子ホーンから固定用ビスを外し、刃固定具を取り出した所。固定ビスのダメージはもちろん、刃固定具にもいくつもの傷が見える。固定ビスをセットする円状の窪みにも深刻な傷が残っており、このまま使い続ければビスが食い込み外れなくなる可能性も出てくるだろう。また、刃固定具を取り出した際、ホーンから黒いゴミ(○で囲んだ部分)が落ちてきている。
この黒いゴミの正体は刃固定具を裏返す(写真右)とすぐに判明する。超音波振動により刃固定具裏面にできた黒い筋。これは超音波の振動により刃固定具自体が削れてしまったためだ。
もし振動子ホーン内部が汚れた状態で超音波カッターを使用し続けると……

①超音波振動が正確に伝わらず切断力が落ちる

②刃へ伝える超音波振動が不安定になり、異音が発生

③ホーン内部にゴミが入っているため、
オーバーヒートしやすくなり使用時間が低下

と、上記のような問題が発生するようになる。
また本体にセットした状態で刃固定具または固定ビスが破損し、自力では取り外すことができなくなり、故障・またはメーカーへの修理対応を行う場合もある。こまめなメンテナンスを行うことで、それらの事故を未然に防ぐことも今回の記事の狙いのひとつだ。

猛烈な超音波振動を受けて替え刃を支えている刃固定具ならびに固定ビスは消耗品。写真のように破損する前にこまめに交換しよう。


 振動子ホーンの清掃

固定ビスを外し、刃固定具を取り出したら振動子ホーン内部を軽くチェック。ざっと見ただけでもさまざまな部分が汚れていることがわかる。これだけ汚れた状態ではいきなりメンテナンスセットを使用しても効果が薄い。先に綿棒を使い、振動子ホーン全体の汚れを拭いていこう。

▲清掃前の振動子ホーン。外側にも汚れがかなり付着しているだけでなく、ネジ山までかなり汚れている。


▲乾いた綿棒で内部をしっかり拭き取る。回転させるだけでなく、前後にも軽く動かして汚れを拭き取っていく。1回の拭き取りで綿棒にかなりの汚れが付着した。


固定ビスを止めるネジ山は精密綿棒を使用して汚れを拭き取った。
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乾いた綿棒で拭いただけでは不安だったため、2度目は綿棒に無水エタノールを軽く含ませてからホーンの内部〜外側の汚れを拭うことにする。


▲綿棒表面を無水エタノールでかるく湿らせた上で2度目のホーンの洗浄。拭き取った後は乾燥を待ってから次の清掃を行おう。

続いて振動子ホーン内部似残った細かな塵の除去と、これまでの行程で残っている可能性のある綿棒の繊維や無水エタノールを完全乾燥させるため、ブロワーで風を吹きつけた。

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▲ホーン内部の清掃専用の『メンテナンスセットSB01』。青色のやすり3枚とやすりを巻き付ける切れ目の入った鉄棒が付属。やすりのみ10枚セットの『メンテナンスやすりSB02』も販売されている。


▲メンテナンスセットは鉄棒の切れ目にヤスリのはじを引っかけてから、やすりをしっかりと巻き付けて使用する。巻き付け方が甘いと、振動子ホーンに入らないので注意。

ここまでの行程でかなり丁寧に振動子ホーンの掃除を行った。見た目的にはもうかなりの汚れが落ちているためメンテナンスセットを使わなくても十分きれいなのでは? 使ってももう汚れは出てこないのでは? という疑問が頭を持ち上げる。しかし、メンテナンスセットSB01を使った所、ごらんの通り、綿棒では取り切れない汚れがあることが判明した。


▲メンテナンスセットを使用して振動子ホーン内部を磨く。ネジを巻く要領で鉄棒を回転させたり、時折鉄棒を引き出しながら回すとより汚れが取れるだろう。
メンテナンスセット使用完了。事前にあれだけしっかりと綿棒&無水エタノールで掃除したにもかかわらず、ヤスリ表面には汚れがびっしり!
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メンテナンスセット使用後にもう1度綿棒で振動しホーン内部を拭きとったら、新しい固定ビス&刃固定具を用意してセットしていく。今回は固定ビスをより正確にしっかりと取り付けるため付属の六角レンチではなく『トルクドライバーZH25T』を使用した。トルクドライバーを使用した刃の交換は左右にぶれにくい。またビスが固定される位置まで回すとトルクドライバー自体が『ガチン』と音を立てるため、締め位置が把握しやすいのも特徴だ。

▲ネジに対して水平位置が保ちやすいトルクドライバー。メンテナンスと替え刃の取り付けをより快適にしてくれるアイテムだ。
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ホーンの清掃を終え新しい標準刃、刃固定具、固定ビスを取り付けたZO-41。回復した切断力でより作業が効率的になるだろう。



今回は超音波カッターを使う上で大事な振動子ホーンのメンテナンスについて、さらに掘り下げてみた。刃に超音波振動を伝えることで圧倒的な切れ味を発揮する超音波カッターだけに、刃を支え振動を伝えるホーンのコンディションには常に気を配っておきたい所だ。

▲今回取り出した刃固定具と固定ビスを未使用のものと比較。左が取り出したもので、右が未使用のセット。負荷のかかるネジ部分はもちろん全体に傷が浮き出て黒ずんでいるのがわかるだろう。刃固定具と固定ビスは消耗品! より快適な切断のためにも常に交換できるように予備を用意しておくと良いだろう。
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