超音波カッター使用レポート
厚みのある素材をカットする

超音波カッターの魅力と言えば、何と言っても普通のカッター等では切りにくい(時間がかかる)ものを容易に加工できる切断力。しかし、よく切れるが故に作業中に起こりがちな失敗として厚みのある素材の中に刃を食い込ませてしまうことがある。 超音波カッターは超音波による振動により切断力を増している工具なので、こうなってしまうと折角の切断力が発揮できない。これらは特に溶けの発生しやすいプラスティック素材や、木材(焦げた木くずが切断面にたまるため)起こりやすい現象だ。しかも素材への食い込みは超音波振動による切断力を奪うだけでなく、替え刃や超音波カッター自体にも負荷をかけるためできるだけ避けたいがやはり厚みのある素材こそ切りたいのも事実。そこで今回は厚みのある素材をカットする1つの方法を紹介する。例として実際にスチロール樹脂を使用してカットの手順を紹介。また後半ではポリプロピレンやMDFなどの素材のカットも行っていく。



▲切断中に起こりがちな素材への食い込み。特に溶けが発生しやすい比較的柔らかいプラスティック素材で起こりやすい。この画像では完全に素材に刃が食い込んでおり、ハンドピースを持ち上げるとそのまま素材が持ち上がってしまった。
標準刃

替え刃紹介

超音波カッターZO-80を使用。替え刃は標準刃を使用。手順の例として紹介したスチロール樹脂ではNormalモードを使用。後半紹介する2素材ではHighモードを使用している。


 厚めのスチロール樹脂を切断する

厚めの素材を切るコツは1回で切断しようとしないこと。つまりは複数回に分けて素材に切り込みを入れ、超音波カッターの刃が振動するための切断面をつくりながら切る……のだが言葉で説明してもわかりにくいと思うため今回は作業内容を図解しつつ紹介していくことにする。

刃の角度を変え2回に分けて切り込みを入れる

素材に対して図の①②のように角度を付け刃を入れる。ただし刃を入れる深さの目安は替え刃の半分程度。それ以上の厚みがあり刃が沈む場合は刃を入れる回数を増やすこと。

くさび型に切り込みを入れる
斜めにに入った切り込み
分かりやすいよう透明な樹脂材を加工してみた。斜めに切り込みを入れた状態①。深く刃を入れるのではなく手早くサッと切ることを意識すればOKだ。
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切断部分から余白をとり三角形を切り取る

真上から刃を入れやすくするため前工程①②で入れた切り込み部分から不要な部分を除去する。切り込みがしっかり入っていれば容易に取り外すことができるはずだ。また、溶けが発生する素材の場合は②の切断時に三角形部分をめくり上げながら切断したり、複数回切り込みを入れると除去しやすくなる。

加工部分を切り取る
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溝から真下に切断

パーツを左右に分割する。切り取った三角のへこみからまっすぐ刃を入て切断。ここでも刃の沈む深さに注意。まだ素材が分厚いようであれば一度で切るのではなく、何度か刃を滑らせて切断すると良いだろう。

真下に切断
切断する
ひとまずパーツの分割が完了。しかし切断面がまだ斜めになったままなので、この次の工程で切断面を整えていく。
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余白をカットする

切り離したパーツの角度の付いた余白部分をカットする。ここでも刃が厚みに挟まれてしまう場合は、途中で斜めに切り込みを入れ不要な部分を除去しつつ作業を進めていこう。食い込み防止のため刃の半分以上は素材に食い込まないように意識すると良いだろう。
以上の手順を守れば厚みのある素材の加工がしやすくなるはずだ。

真下に切断
くさび型に切り込みを入れる
余分な部分のカットが完了。後はヤスリ等を使用して切断面をならせば作業は完了になる。



 その他の素材のカット

次にポリプロピレンやMDF(中密度繊維板 )などのよく加工される厚めの素材を上記の方法で同様に切断してみた。

ポリプロピレン

粘りがあり頑丈なプラスティック素材。その特性から通常のカッターでは非常に加工しにくい素材だ。超音波カッターでまっすぐ刃を入れると素材のねばりから食い込みやすい素材でもある。しかも今回のポリプロピレンは小さなゴミ箱の蓋で皿状に湾曲した形状。作業前は難易度が高いことを想定していたが、実際には今回の切断方法とは非常に相性が良くサクサクとカットすることができた。切断面の溶けも少なくなめらか。あまりにもスピーディーに作業が進むため、勢い余ってガラスのカッターマットに刃の先端を勢いよくぶつけてしまい刃の先端が欠けてしまうほどだった。

ポリプロピレン

MDF(中密度繊維板 )

木材の繊維を原料とし加工された素材のため、カットの際に細かな粉塵が発生しやすい。事実以前のReportでは、まっすぐ刃を入れた通常カットの際に刃が素材に食い込み、粉塵が焦げ激しく煙を上げつつ切断された。切断面も黒く焦げている。しかし今回の切断方法を試した所まっすぐ切断した時より時間こそかかるものの焦げは最小限に納めることができた。さらに以前の切断方法ではMDF切断後に替え刃がまっ黒に焦げ、先端もボロボロになりすぐに刃を交換することになったのだが、今回の切断方法では刃へのダメージは軽微となった。

MDF 表面
MDF カット側面
刃を入れる回数こそ多いものの、素材の焦げを最小限に留めながら切断することができた。
MDF 切断


今回の切断方法を試して感じたのは素材・替え刃の両方へのダメージの少なさ。事実今回使用した標準刃へのダメージの内一番大きなダメージはポリプロピレンを勢いよく切った際にガラスマットにたたきつけた刃の先端欠けだった。カットする際に大きな余白が必要となるのが難点だが、切断に際して力を入れずに済むことや、まっすぐカットする時よりも素材へのダメージを抑えることができるのは魅力。もちろん素材への食い込みが無い薄手の素材に対しては従来どおりのまっすぐに切る方法が最も有効なのは事実。素材や目的に合わせて様々なカット方法を試し、より作業の効率化を目指してほしい。

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(C)豊橋工専高校模型部